スペインでの生活

治安・安全対策Q&A 15問

アンダルシアの治安を、外務省と内務省の公的データで確認します。都市別の犯罪件数、日本人の被害の実態、子ども連れで本当に気をつけること、緊急連絡先までまとめました。

治安の実態

アンダルシアの治安は良いですか? 家族で安心して暮らせますか?

まず、日本の外務省はスペインに危険情報を出していません(2026年8月時点)。最も低いレベル1「十分注意してください」も出ていません。国として安定していることを示す、最も分かりやすい指標です。

次に日本人の被害を見ると、2024年に在スペイン日本国大使館・総領事館が認知した邦人被害は232件でした。うち約99%(229件)が盗難で、暴力犯罪ではありません。発生地はバルセロナが約57%(133件)、マドリードが約14%(32件)で、観光の二大都市に集中しています。

外務省が「主な犯罪発生地域」として挙げているのはマドリード、バルセロナ、カナリア諸島の3つで、アンダルシアの都市は一つも名指しされていません。

つまり実際に考えるべきなのは、凶悪犯罪に巻き込まれるかどうかより、スリや置き引きにどう備えるかです。このリスクは、貴重品の扱い方でほぼ対処できます。

アンダルシアの都市別の治安を、数字で比較できますか?

スペイン内務省は四半期ごとに犯罪統計を公表しています。2025年(1〜12月)の市町村別の数字は次のとおりです。

主要都市の犯罪認知件数(2025年1〜12月・スペイン内務省)
都市犯罪総数うち窃盗(スリ・置き引き等)前年比
セビージャ50,25314,255-1.6%
マラガ38,22512,846+2.3%
コルドバ18,5894,402+13.2%
マルベーリャ14,1493,747+3.0%
グラナダ13,0363,545-1.0%
アルメリア9,7582,411-1.0%
カディス5,7541,456+2.9%
(参考)マドリード229,66272,548-3.1%
(参考)バルセロナ169,67876,713-3.6%

件数であり、人口あたりの犯罪率ではありません(内務省は都市別の率を公表していません)。都市ごとに人口規模が違うため、この表だけで都市の優劣は比較できません。

規模をつかむには窃盗の件数が分かりやすいです。バルセロナ市1都市の窃盗は76,713件で、アンダルシア州8県すべてを合わせた窃盗は88,028件。人口約160万人の都市1つと、人口850万人規模の州全体がほぼ同じ件数というのが、アンダルシアの位置づけです。

州全体では、2025年の犯罪総数は前年比+1.8%、直近の2026年1〜3月は前年同期比-0.5%でした。大きく悪化する傾向は見られません。

「コルドバやグラナダは治安が悪い」という記事を見ました。本当ですか?

個人の旅行記やまとめ記事では、コルドバ・グラナダ・アルヘシラスといった都市名が「要注意」として挙げられることがあります。ただし公的な情報と照らし合わせると、都市名を名指しする裏付けは確認できません。

外務省が「主な犯罪発生地域」として具体的に挙げているのは、マドリード、バルセロナ、カナリア諸島の3つだけです。駅や広場などの場所まで例示されているのも、この3地域です(2025年11月27日更新時点)。アンダルシアの都市は一つも挙がっていません。

内務省の件数で見ても、コルドバ18,589件・グラナダ13,036件に対し、同じ統計のマドリードは229,662件、バルセロナは169,678件と桁が違います。

ただし件数は人口規模や観光客数に左右されるため、この数字から「コルドバよりグラナダが安全」といった都市間の優劣は読み取れません。前年比ではコルドバが+13.2%と上昇しており、「小さい街だから安心」とも言い切れません。

都市名で安全か危険かを判断できる公的な根拠はありません。ネット上の「危険な街ランキング」は、出典をたどると個人の印象に行き着くものがほとんどです。

実際に役立つのは、都市ではなく場面ごとに備えることです。外務省が挙げる手口は、どれも「駅と公共交通」「観光地の人混み」「飲食店とホテルのロビー」「夜の人通りの少ない道」「車での移動中」という限られた場面に結びついています。これはアンダルシアでも他の地域でも変わりません。下の手口表は、場面ごとの備え方として読んでください。

旅行者が狙われやすい手口は、スペイン国家警察も公式の啓発動画(スペイン語・英語)で紹介しています。渡航前に家族で一度見ておくと、言葉が分からないお子さんにも伝わりやすいです。

避けるべきエリアはありますか?

公的機関が「この地区は危険」と名指しするランキングはありません。外務省も内務省も、都市内の地区別の治安評価を公表していないためです。ネット上の地区名リストは出典が分からないまま孫引きされているものが多く、そのまま信じるのは危険です。

客観的な手がかりになるのは所得統計です。スペイン国立統計局(INE)の2025年版都市指標では、セビージャのLos Pajaritos/Amate地区(2023年の1人あたり平均年収7,311ユーロ)とPolígono Sur地区(同7,422ユーロ)が、スペイン全国で最も所得の低い地区に挙げられています。所得が低いことは治安が悪いことと同じではありませんが、住まい選びの参考にはなります。

実際には、どの都市にも夜間や一人では避けたい一角があります。物件を選ぶ段階で、「夜のグラウンド送迎で通る道」まで確認しておくのが確実です。私たちの下見プログラムでは、夜の時間帯の様子も実際に見ていただけるようにしています。

日本人が狙われやすい犯罪と、その手口を教えてください。

外務省が公式に挙げている手口は次のとおりです。どれも暴力ではなく隙を突くタイプで、手口を知っているだけで防げるものがほとんどです。

外務省が挙げるスペインでの主な犯罪手口
手口内容特に注意する場面
一般的なスリ混雑に紛れて財布・スマホを抜き取る公共交通、観光地、人混み
目隠しスリ新聞や地図で視界を覆いながら抜き取る駅、路上
親切を装ったスリ荷物運びを申し出る、エスカレーターをわざと停止させ混乱に乗じる駅の階段、エスカレーター
ケチャップスリ衣服を汚し、拭き取るふりをして抜き取る路上、観光地
置き引き足元・椅子の背の荷物を持ち去る飲食店、ホテルのチェックイン中、ビュッフェ、駅・空港
ひったくり裏通りでの待ち伏せ。バイク使用の例も夜間の細い道
首絞め強盗背後から首を絞めて金品を奪う人通りの少ない場所
パンク窃盗タイヤのパンクを指摘して車を停めさせ、確認や修理をする隙に車内の荷物や車そのものを盗む車での移動中(送迎・遠征・買い物)
カードのすり替え詐欺支払い時にカードを別のものと交換する空港

日本人が特に引っかかりやすいのは「親切を装ったスリ」です。日本人には、困っているときに助けてくれる人を疑わない傾向があるためです。駅の階段で荷物を持とうと申し出られたら丁寧に断る、と決めておくだけでも被害に遭いにくくなります。

基本の対策は次の3つです。

  • 貴重品は前掛けバッグかファスナー付きの内ポケットに入れる(ズボンの後ろポケットには絶対に入れない)
  • レストランで椅子の背にバッグをかけない、テーブルにスマホを置かない
  • ホテルのチェックイン・チェックアウト中こそ、足元の荷物から目を離さない
夜は危ないですか? 女性や子どもが狙われやすいことはありますか?

旅行記では「夜は危ない」「女性の一人歩きは要注意」という書き方をよく見かけます。在スペイン日本国大使館の「安全の手引き」(2026年8月版)は、日本人の被害について別の見方を示しています。

手引きによると、日本人の被害は時間帯や被害者の年代・性別に偏りがありません。昼なら安全、大人の男性なら大丈夫、とは言えないということです。大使館は、誰もが常に警戒する必要があるとしています。

日本人の被害の内訳(2025年・スペイン全土・在スペイン日本国大使館)
種別件数
置引き96
スリ53
ケチャップスリ26
車上狙い・パンク盗18
強盗9
ひったくり2
その他9
合計213

大使館の「安全の手引き」(2026年8月版)に載っている件数です。都市別の内訳は載っていません。

件数の約8割は、置引きとスリ(ケチャップスリを含む)です。どちらも駅や飲食店など人の多い場所で起きる被害で、夜だけ用心しても防げません。

一方で、首絞め強盗やひったくりは人通りの少ない道で起きます。外務省は、人通りの少ない道では周りに注意し、不審な人に気づいたら近くの店に逃げ込むよう案内しています。

夜の練習や試合で帰りが遅くなる日は、明るく人通りのある道を選んでください。子どもだけで歩かせず、送り迎えの道順を家族で決めておくと安心です。バスやタクシーの使い方は「交通・移動」で解説しています。

子どもの安全

子どもだけで外出や通学はできますか?

スペインでは、小学生が一人で通学するのは日本ほど一般的ではなく、保護者が送り迎えするのが基本です。12〜13歳頃から、子どもだけで行動できる範囲が少しずつ広がっていきます。夜間に子どもだけで外出するのは、年齢を問わず避けてください。

基本は「日本の感覚より半歩慎重に」ですが、日中の住宅街や公園では子どもたちが普通に遊んでいて、過度に怖がる必要はありません。邦人被害の99%が盗難であることを考えると、子ども本人に高価な物を持たせないことが一番の防御になります。

練習や試合会場での注意点はありますか?

グラウンドには観戦する家族が多く、雰囲気は和やかです。注意したいのは貴重品の管理で、更衣室やベンチ周りでの盗難はスペインでもよくあるトラブルです。財布やスマホは親が預かるか、最小限しか持たせないようにしましょう。

夏場は、観戦する親自身の熱中症対策(帽子・水・日陰の確保)も忘れないでください。アンダルシアの夏は日中40度を超える日があります。

父親または母親だけで子どもを連れて渡航する場合、注意点はありますか?

見落とされがちですが、重要な点です。外務省は、スペインでは親権者であっても、もう一方の親の同意なく18歳未満の子を国外に連れ出すと「未成年者の奪取」として重い罪に問われる可能性があると注意を呼びかけています。

夫婦のどちらか一方だけが子どもに付き添って留学・移住する場合は、もう一方の親の同意書(できれば公証を受けたもの)を用意しておくことを強くおすすめします。空港で説明を求められたときの備えにもなります。

離婚や別居をされているご家庭では特に重要です。必要な書類は個別の状況によって変わるため、無料相談でも確認いただけます。

スペインの警察や大使館はどう頼ればいいですか?

緊急時は112です。EU共通の番号で、警察・消防・救急のすべてにつながり、英語でも対応してもらえます。まずはこの番号を覚えておけば十分です。

覚えておきたい連絡先
用途番号・連絡先
緊急全般(警察・消防・救急)112
国家警察 Policía Nacional091
市警察 Policía Local(交通事案など)092
消防080
救急061
外国人旅行者向けの被害届(電話)902-102-112
在スペイン日本国大使館(マドリード)(+34) 91-590-7600 / 領事警備班 91-590-7614

アンダルシア州は在バルセロナ総領事館ではなく、マドリードの在スペイン日本国大使館の管轄です。

盗難の被害に遭ったら、denuncia(被害届)を提出します。パスポートを盗まれた場合は、被害届を出してから大使館で再発給の手続きをします。保険金の請求にも被害届が必要なので、届けを出さずに諦めることはしないでください。

予防と備え

渡航前にできる安全対策はありますか?

次の4点で、ほとんどの事態に備えられます。

  • 3ヶ月未満の滞在なら、外務省の「たびレジ」に登録する(緊急情報がメールで届く)
  • パスポート・保険証書・カードのコピーを、クラウドと紙の両方で保管する
  • クレジットカードの緊急連絡先を控える
  • 家族の集合場所・連絡ルールを決めておく

3ヶ月以上滞在する場合は、「在留届」の提出が法律で義務づけられています(オンラインで提出可能)。たびレジと在留届はどちらも外務省のサービスで、緊急時に日本政府があなたの所在を把握するための仕組みです。

パスポートは持ち歩くべきですか? ホテルに置いておくべきですか?

旅行記では「パスポートはホテルの金庫に置き、コピーを持ち歩く」という助言をよく見かけます。しかし、スペインの法律と日本の外務省の案内は、原本を持ち歩くよう求めています。

スペインの市民安全保護法(Ley Orgánica 4/2015)第13条は、スペインにいる外国人に対し、本国が発行した身分証明書と、スペインでの滞在が適法であることを示す書類を持ち歩く義務を定めています。同条は、警察などから求められたら提示しなければならないとも定めています。外務省の安全対策基礎データも「旅行者は旅券(パスポート)を、長期滞在者は居住許可証(TIE)を常時携行してください」と案内しています。

常に持ち歩くもの(外務省の案内)
滞在の形持ち歩くもの
短期の旅行・下見(ビザなし)パスポート
長期滞在(留学・移住)居住許可証(TIE)

外務省はシェンゲン圏内の移動でも、予告なくパスポートの確認や所持品検査が行われることがあるとしています。

答えは、持ち歩いたうえで盗られない持ち方をすることです。ファスナー付きの内ポケットや体の前側のバッグに入れ、財布とは分けて持ってください。コピーは原本の代わりにはなりません。なくしたときに再発行を早めるための控えとして、渡航前にクラウドと紙で保管しておきます。

長期滞在では、TIEを取得したあとはTIEを持ち歩きます。TIEの取り方は「滞在手続き(NIE・TIE・住民登録)」で解説しています。

スリや置き引きに遭ったら、何をどの順番ですればいいですか?

被害に遭った直後は慌てがちですが、やることの順番は決まっています。

盗難被害に遭ったときの手順
順番やることポイント
1身の安全の確保。暴力や脅しを受けた・いま犯行が続いている場合は通報緊急は112、国家警察は091
2クレジットカード・スマホの利用停止各カード会社の紛失・盗難窓口へ。連絡先は渡航前に控えておく
3警察に被害届(denuncia)を出す警察署(comisaría)で出すか、下のインターネット受付を使う。保険金の請求にも必要
4パスポートを盗まれた場合は大使館で手続き被害届を出したうえで、パスポートまたは「帰国のための渡航書」の発給を申請する

国家警察には、インターネットで被害届の下書きを出せる受付(Oficina Virtual de Denuncias)があります。入力すると受付番号が出るので、指定した警察署に持参して署名します。署名は72時間以内に行う必要があり、署名するまでは被害届として有効になりません。インターネット経由の届出は、原則として署での対応が優先されるとされています。

インターネット受付が使えないのは、暴力や脅しを伴う被害、犯人が分かっている・顔を見て分かる場合、目撃者がいる場合、届け出る本人が未成年の場合などです。これらは警察署で直接届け出ます。

パスポートをなくしたときについて、外務省は「国境を越えることなく、滞在地において現地警察に届け出る」よう案内しています。アンダルシア州を管轄するのは、マドリードの在スペイン日本国大使館です。被害届を持って、パスポートの再発給か、帰国のための渡航書のどちらかを申請します。どちらが必要か、どんな書類が要るかは渡航日程によって変わるので、事前に大使館へ電話で確認しておくと確実です。

住まいの防犯はどうすればいいですか?

スペインの都市部のマンションは、オートロックと各戸の頑丈な玄関扉(puerta blindada)が標準です。集合住宅の中層階は、空き巣のリスクが比較的低いとされています。1階や最上階、一軒家を選ぶ場合は、窓の格子やアラームの有無を確認してください。

参考までに、アンダルシア州の住居侵入窃盗は2025年に10,807件で、前年比-15.6%と大きく減っています(スペイン内務省)。長期の家探しでは、防犯性も内見のチェック項目に入れておくことをおすすめします。

デモやストライキに遭遇したらどうすればいいですか?

スペインではデモやストライキはよくある社会活動で、ほとんどは平和的に行われます。基本は、近づかない、写真を撮りに行かない、迂回する、の3点です。交通ストでも公共交通の最低限の運行(servicios mínimos)は保証されるので、事前にニュースで運行情報を確認しましょう。

たびレジに登録しておくと、大規模なデモ・ストの情報が日本語で届きます。

参考にした一次情報

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