FIFA規定・選手登録

FIFA第19条の基本Q&A 13問

18歳未満の選手は、なぜ海外クラブに登録できないのでしょうか。その根拠となるFIFA RSTP第19条について、原則、5つの例外、初回登録、10歳を境にした審査の違いを、条文の構成に沿って解説します。

規定の内容

FIFA第19条とはどんな規定ですか?

FIFAの「選手の地位と移籍に関する規則(RSTP)」第19条は、選手の国際移籍を18歳以上に限定する規定です。外国籍の未成年選手がその国で初めて選手登録する場合(初回登録)にも、同じ制限が適用されます。

そのため日本国籍の17歳以下の選手は、移籍でも新規登録でも、原則としてスペインのクラブに選手登録できません。登録できなければ公式戦にも出場できません。認められるのは、限定的な例外要件を満たす場合だけです。

第19条には何が書かれていますか? 条文の構成を教えてください。

第19条は「原則禁止」「例外」「初回登録への適用」「審査の手続き」の4つの部分でできています。現行の2025年1月版の条文を、家族が知っておくべき点に絞って整理すると、次の表のとおりです。

FIFA RSTP第19条の構成 (2025年1月版)
項定めている内容家族にとっての意味
1項選手の国際移籍は18歳以上に限る18歳未満は原則として海外クラブへ移籍できない
2項a例外① 親がサッカーと関係ない理由で、クラブのある国へ移り住む日本から家族で渡る場合に検討の対象となる、ほぼ唯一の例外
2項b例外② 16〜18歳で、EU・EEA域内の移籍、または同じ国の協会間の移籍(クラブには教育・生活面の義務あり)EU・EEA域内の移籍が対象。日本からスペインへの移籍は当てはまらない
2項c例外③ 国境から50km以内に住み、隣国の国境50km以内のクラブへ移る(自宅とクラブは100km以内、自宅から通う)国境の近くに住む家庭向けの例外
2項d例外④ 人道上の理由で親を伴わずに逃れ、到着国で滞在が認められた未成年(難民など)保護を必要とする子どものための例外
2項e例外⑤ 学業のため親を伴わず一時的に移る交換留学生登録は最長1年、純アマチュアクラブに限られる
3項その国で一度も登録したことがなく、国籍がなく、直近5年以上続けて住んでいない選手の「初回登録」にも同じ制限を適用移籍でなくても、スペインで初めて登録するなら第19条の対象
4〜5項10歳以上は、FIFAのFootball Tribunal(選手の地位委員会)の事前承認が必要承認が出るまで移籍証明書(ITC)の請求も初回登録もできない
6項10歳未満は、登録する協会が例外への該当を登録前に確認するFIFAの承認は不要でも、要件は同じ
7項協会はFIFAに「限定的未成年免除(LME)」を申請できる。認められれば、純アマチュアクラブに登録するアマチュア未成年は4項の承認申請が不要になるその場合も、例外への該当は協会が登録前に確認する

FIFA公式の条文(2025年1月版)を要約したもので、正文は英語版です。日本語の解説記事には「例外は3つ」とするものがありますが、現行の条文は2項a〜eで5つの例外を定めています。改正版のRSTPは2026年6月10日に承認され、2027年1月1日に施行される予定です。渡航時期に合わせて最新の条文を確認してください。

日本から家族でスペインへ渡る場合に実際に検討の対象となるのは、ほとんどが2項aの「親の移住」と3項の「初回登録」です。それぞれの具体的な条件や審査で見られる点は、このカテゴリの「例外規定(19条2項)の適用条件」で解説しています。申請の流れと必要書類は「スペインでの登録手続き(RFEF・RFAF)」をご覧ください。

なぜ18歳未満の国際移籍は禁止されているのですか?

未成年選手を保護するためです。過去には、家族から引き離された少年選手が海外クラブとの契約に至らず、現地に放置されるなど、人身取引に近い搾取が国際的な問題になりました。FIFAは「若い選手の移籍が本人の利益より商業的利益で動くこと」を防ぐため、原則禁止と限定的な例外という厳格な枠組みを採用しています。

この背景を知っておくと、例外の審査で「本当に子どものサッカー以外の理由か」が厳しく確認される理由もわかります。

第19条は何歳から適用されますか? 10歳の子どもにも関係ありますか?

国際移籍・初回登録の制限は、18歳未満のすべての選手に適用されます。10歳でも15歳でも、外国籍選手としてスペインの連盟に登録しようとすれば審査の対象です。

年齢で変わるのは審査の手続きです。10歳以上の場合は、FIFAのFootball Tribunal(選手の地位委員会)の事前承認が必要になります。10歳未満の場合、FIFAへの承認申請は不要です。ただし登録しようとする協会が、例外要件に「疑いの余地なく」該当することを登録前に確認する責任を負います(第19条6項)。小さい子なら自由に登録できるわけではなく、要件そのものは年齢にかかわらず同じです。

第19条の審査は、FIFAのどこがどんな基準で判断しますか?

判断するのは、FIFAのFootball Tribunalにある「選手の地位裁判部(Players' Status Chamber)」です。FIFAは2026年2月に「未成年申請の提出ガイド」を公表し、10歳以上の申請の流れを6つの段階で示しています。

FIFAへの未成年申請の流れ (FIFA『Guide to Submitting a Minor Application』2026年2月版)
段階担当行うこと
1登録先の協会選手・親・クラブから書類を集め、FIFAの移籍管理システム(TMS)で申請を作って提出する
2前に登録していた協会国際移籍の場合に限り、7日以内に同意か異議を出す。返答がなければ申請は自動的にFIFAへ送られる(人道的な理由の申請は除く)
3FIFA事務局担当者が書類を確認し、必要なら追加の資料を求める。裁判部に判断案を出すが、拘束力はない
4選手の地位裁判部申請を審理し、決定をTMSに登録する
5協会への通知「承認」「却下」「不受理」のいずれかがTMSで届く
6登録先の協会通知から10日以内に請求すると、決定の理由書が届く。理由書の通知から21日以内であればCASに上訴できる

10歳未満の場合はFIFAへの申請が要らず、登録する協会が登録前に要件を確認します(第19条6項)。協会がLME(限定的な未成年免除)を受けている場合も、純アマチュアクラブに登録するアマチュア選手については協会が確認します(第19条7項)。

申請を出すのは協会で、家族がFIFAに直接申請する仕組みではありません。例外に当たることは、申請する協会の側が示します。求められる程度は「裁判官が十分に納得できる程度(comfortable satisfaction)」です。

書類の日付にも目安があります。住所の証明をはじめ多くの書類は、純アマチュアクラブへの申請なら6ヶ月以内、プロクラブへの申請なら3ヶ月以内に発行されたものが原則です。スペインで集める書類と提出の流れは「スペインでの登録手続き(RFEF・RFAF)」、審査期間の目安は「例外規定(19条2項)の適用条件」をご覧ください。

第19条に違反すると、クラブはどんな処分を受けますか?

FIFAの懲戒委員会は、違反したクラブに「選手登録の禁止」と罰金を科してきました。選手登録の禁止とは、国内・国外を問わず新しい選手を登録できなくなる処分で、いわゆる補強禁止です。スペインの2クラブとイングランドの1クラブについて、FIFAの発表とCAS(スポーツ仲裁裁判所)の裁定をもとに整理すると次のとおりです。

第19条違反でFIFAが処分したクラブの例
クラブFIFAの処分(発表日)その後(CASへの不服申立て)
アトレティコ・マドリード2016年1月14日。2007〜2014年に関わった未成年選手について違反を認定。選手登録の禁止2期連続、罰金90万スイスフラン2017年6月、CASは2期連続の登録禁止を維持し、罰金を55万スイスフランに変更
レアル・マドリード2016年1月14日。2005〜2014年に関わった未成年選手について違反を認定。選手登録の禁止2期連続、罰金36万スイスフラン2016年12月、CASは処分を軽減したうえで、登録禁止と罰金そのものは維持
チェルシー(イングランド)2019年2月22日。29人の未成年選手について第19条違反を認定。選手登録の禁止2期連続、罰金60万スイスフラン。イングランドサッカー協会(FA)にも罰金51万スイスフラン2019年12月、CASは違反を認めたうえで、登録禁止を1期(2019年夏に消化済み)、罰金を30万スイスフランに軽減

FIFAの公式発表・声明と、FIFAが公開しているCASの裁定書(CAS 2019/A/6301)をもとに要約しています。「期」は選手登録ができる期間(夏・冬の移籍期間)のことです。FIFAの処分には、対象となった未成年選手の状況を90日以内に是正する命令も含まれていました。

FIFAは世界的なクラブに対しても、数年分の登録にさかのぼって処分を科しています。処分の影響はクラブだけでなく選手にも及び、登録が認められなければ公式戦には出られません。2014年のバルセロナの事例で未成年選手たちに何が起きたかは、下の「よくある誤解」で紹介しています。家族にとってのリスクと、勧誘で注意すべき文言は「違反事例と注意すべき勧誘」で解説しています。

適用範囲

練習参加やキャンプ参加にも第19条は適用されますか?

適用されません。第19条が規制するのは、連盟への「選手登録」です。登録を伴わない練習参加、サマーキャンプ、スクール活動は対象外となります。そのため短期のサッカー留学は、「練習参加型」として合法的に成り立っています。

逆に言えば、登録しない以上、リーグ戦などの公式戦には出場できません。「留学すれば試合に出られる」わけではないことを、最初に理解しておいてください。

登録せずにクラブのアカデミーやスクールに通う場合、FIFAの規則は関係ありますか?

関係があります。第19条が規制するのは選手登録です。ただし、すぐ後に置かれた第19条の2と第19条の3は、登録していない子どもにも適用されます。

FIFAの規則でいう「アカデミー」には、サッカースクールやキャンプも含まれます。2025年1月版の条文を、家族に関わる点に絞って整理すると次の表のとおりです。

登録しない活動に関わる規定 (第19条の2・第19条の3、2025年1月版)
条文定めている内容家族にとっての意味
第19条の2 1項アカデミーを運営するクラブは、通っている未成年を全員、所属する協会に報告する。クラブに登録しているかどうかは問わないクラブのアカデミーやスクールに通うと、登録していなくても協会に報告される
第19条の2 2項協会は、クラブと関係のない民間アカデミーにも、通っている未成年の報告を求める民間のスクールに通う場合も報告の対象になる
第19条の2 3項協会は報告された未成年について、氏名・国籍・生年月日・出身国・代理人(いる場合)などを登録簿に記録する報告には子どもの国籍や生年月日が含まれる
第19条の2 6項協会は、その国の国籍がなく、直近5年以上続けてその国に住んでいない未成年をFIFAに報告する。報告には、第19条の要件を満たすかどうかの一応の評価を付ける日本から渡った子どもは、アカデミーに通うだけでもFIFAへの報告の対象になる
第19条の3 8〜9項未成年がクラブのトライアル(入団テスト)を受けられるのは、16歳の誕生日を迎えるシーズンから。本人とクラブの所在地がともに欧州なら15歳から。親の書面の同意が要り、1暦年に2回までこのシーズンに入るまでは、クラブの入団テストを受けられない

FIFA公式の条文(2025年1月版)を要約したもので、正文は英語版です。第19条の2の違反は、FIFAの懲戒委員会が処分します(同条7項)。2027年1月1日に施行予定の改正版で条文が変わる可能性があるため、渡航時期に合わせて最新の条文を確認してください。

アカデミーに長く通う予定があるなら、運営者がこの報告をしているかを事前に確かめておくと安心です。入団テストの期間や回数の条件は「年齢別ガイド(小学生・中学生・高校生)」で解説しています。公式戦に出るために登録する場合の手続きは「スペインでの登録手続き(RFEF・RFAF)」をご覧ください。

練習試合や非公式の大会には出られますか?

連盟登録を必要としない純粋な親善試合やトーナメント(国際ユース大会の招待枠など)であれば、出場できる場合があります。ただしスペインには日本のように頻繁に練習試合を組む文化がなく、シーズン中の試合はほぼすべて連盟が管轄する公式戦です。

「1ヶ月滞在しても試合経験はゼロだった」という声が多いのはこのためです。試合に出る機会がどの程度あるかは、参加前にプログラム運営者へ具体的に確認してください。

アマチュアの地域クラブへの登録なら制限はないのでは?

アマチュアクラブでも制限はあります。外国籍の未成年が初回登録する以上、例外要件の審査を通る必要があります。違うのは審査の窓口です。プロライセンスを持つクラブへの登録にはFIFAの機関(Football Tribunal)の事前承認が必要ですが、純アマチュアクラブへの登録はスペインサッカー連盟(RFEF)が処理します。

アマチュアだから自動的に登録が認められるわけではなく、必要書類と審査の枠組みはプロクラブと共通です。

よくある誤解

「久保建英選手はバルサでプレーしていた」のはなぜ可能だったのですか?

久保選手がバルセロナの下部組織に所属していた時期に、バルセロナは未成年選手の登録に関するFIFA第19条違反で処分を受けました(2014年)。久保選手を含む複数の選手が公式戦に出場できなくなり、最終的に久保選手は日本に帰国しています。

この事例は「未成年でも海外挑戦できる」例ではありません。逆に「名門クラブですら第19条を回避できない」ことを示した象徴的な事例です。

「登録できた日本人の子がいる」と聞きました。ルールは実は緩いのでは?

登録できた事例はあります。ただしそれは、例外要件(親の移住など)を満たし、審査を通過したケースです。特に、親が実態のある就労・居住をしている家族の子どもがアマチュアクラブに登録された例は確認されています。

「誰かができた」ことと「自分の家族の状況でできる」ことは別の問題です。審査は家族ごとの事情(移住理由・時系列・就労実態)を個別に見るため、他人の成功例はそのまま参考になりません。

この規制が将来緩和される可能性はありますか?

見通しは流動的です。2026年5月、スペインの最高スポーツ評議会(CSD)は「合法的に居住する外国籍未成年には連盟登録を認めるべき」とする決定を出しました。この決定とFIFA規則の間には、緊張関係が生まれています。緩和に向かう動きはあるものの、制度の変更が確定したわけではありません。

私たちは最新の動向を継続的に追っています。ただし現時点で計画を立てるときは、「現行ルールで成立する設計」を前提にしてください。

参考にした一次情報

ご注意

本カテゴリの内容は、公開されている規定・判例・手続マニュアルを整理したもので、法的助言ではありません。個別の判断は必ずスポーツ法・移民法の専門家にご確認ください。選手登録の承認はFIFAとスペインサッカー連盟の審査で決まるため、当方が登録・入団・公式戦出場を保証することはできません。

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