親子留学・家族移住
家族移住のステップと時系列Q&A 13問
何を、どの順番で、いつやるのか。移住がうまくいくか、子どもが登録できるかを左右する「正しい順序」を時系列で解説します。
全体の時系列
移住を決めてから渡航までどれくらいかかりますか?
標準的には6〜12ヶ月です。内訳は、(1)検討・下見・意思決定に1〜3ヶ月、(2)ビザ書類の準備(無犯罪証明、収入証明、アポスティーユ、翻訳)に2〜4ヶ月、(3)ビザ申請〜発給に1〜3ヶ月、(4)渡航準備(住居・学校・引越し)に1〜2ヶ月です。
子どもの就学(9月開始)とサッカーのシーズン(9月開幕)から逆算して、春〜初夏の渡航を目指してください。
渡航後の手続きはどんな順序で進みますか?
守るべき順序は、(1)住居の確定 → (2)empadronamiento(住民登録、すべての起点) → (3)TIE申請(入国後1ヶ月以内) → (4)就学手続き → (5)銀行口座・保険・生活インフラ → (6)子どものクラブ探し・練習参加 → (7)生活実態が固まった後に選手登録の申請、です。
サッカーを最後に置くのは、FIFA審査で「親の移住が先、クラブは後」という時系列を明確にするためでもあります。この順序を守ることが、家族を守ることにつながります。
選手登録まではどれくらいかかると考えるべきですか?
渡航から登録完了まで、順調でも3〜6ヶ月は見てください。生活基盤の構築に1〜2ヶ月、クラブとの相互見極めに1ヶ月前後、登録申請の審査に数週間〜数ヶ月(目安2〜4ヶ月)かかり、追加書類の要求で延びることもあります。
この間、子どもは練習生として無登録でトレーニングに参加できます。「最初のシーズンは公式戦に出られない期間がある」ことを、家族で前もって理解しておいてください。
ビザが出てから到着後まで、期限が決まっている手続きは何ですか?
非営利居住ビザ(NLV)で家族移住する場合、スペイン政府と日本の法律で期限が決まっている手続きは次のとおりです。ビザが発給されると、受け取り・入国・TIE申請の期限が順に始まります。
| 手続き | 期限 | どこで・誰が |
|---|---|---|
| 居住ビザ(査証)の受け取り | 発給の通知から1ヶ月以内 | 本人が受け取る。期限内に受け取らないと、ビザを放棄したものとみなされる |
| スペインへの入国 | ビザの有効期間内(最長3ヶ月) | — |
| 居住許可の有効期間 | 入国した日から1年 | 有効期間は入国日から数える |
| TIE(外国人身分証明書)の申請 | 入国から1ヶ月以内 | 居住地の警察署などへ本人が出向いて申請 |
| 在留届(日本側) | 外国に住所・居所を定めて3ヶ月以上滞在する場合に提出義務(旅券法第16条) | 管轄の日本大使館・総領事館へ。外務省のオンライン在留届(ORRネット)でも提出できる |
スペイン側は包摂・社会保障・移民省の案内(Hoja 6、2025年5月更新)に基づく。就学・就労など他の許可では期限や手続きが異なります。個別の条件は申請先で確認してください。
到着後の最初の1ヶ月に住居確定・住民登録・TIE申請を詰めて組むのは、このTIEの期限があるためです。在留届はスペイン側の手続きと別に日本側で必要になるため、到着後の予定に入れておいてください。
渡航前の準備
渡航前にやるべき日本側の手続きは何ですか?
主なものは、(1)ビザ申請(必要書類の収集・認証・翻訳)、(2)海外転出届と税・保険・年金の整理、(3)子どもの学校関係(在学証明・成績証明の取得、通信教育の手配)、(4)金融(口座・証券・NISAの扱い、送金手段の設定)、(5)戸籍関係書類のアポスティーユ+翻訳(現地での就学・登録用)、です。
特に(5)は、現地に行ってからだと取り直しに時間がかかります。「日本でしか取れない書類はすべて持って出る」ことを徹底してください。
家族でビザを申請するとき、何を・どこに・誰が出しますか?
非営利居住ビザ(NLV)の場合、日本に住んでいる家族は、住んでいる地域を管轄するスペインの在外公館(大使館・総領事館、または指定の受付機関)へ本人が出向いて申請します。子どもの申請は、法定代理人である親が提出できます。スペイン政府が案内している申請書類は次のとおりです。
| 書類 | 求められる内容 |
|---|---|
| 申請書(EX-01) | 公式様式に記入し、署名したもの |
| パスポート | 全ページの写し。有効期間が1年以上残っていること |
| 無犯罪証明書 | 本国、または入国前の5年間に住んだ国の当局が発行したもの |
| 資金の証明 | 滞在する期間の生活費。月額で申請者本人はIPREM(スペインの公的指標)の400%、家族1人ごとに100%が加算される |
| 医療保険 | スペインで営業が認められた保険会社の、公的または民間の医療保険 |
| 診断書 | 国際保健規則(2005年)で公衆衛生に重大な影響があるとされる病気にかかっていないことの証明 |
| 手数料 | モデロ790・コード052で納付。申請時に発生し、10営業日以内に支払う |
包摂・社会保障・移民省の案内(Hoja 6、2025年5月更新)に基づく。日本など外国の公文書は、アポスティーユ(または領事認証)を付け、宣誓翻訳者によるスペイン語訳を添えるのが原則です。実際に提出する書類の細目や様式は、申請先の在外公館で確認してください。
家族で申請するときに注意したいのは、資金要件が人数に応じて増えることと、日本でしか取れない公文書にアポスティーユと翻訳の時間がかかることです。スペイン側の審査は、在外公館からの送付を受けてから最長1ヶ月で結論が出る決まりで、その期間内に回答がなければ不許可とみなされます。書類集めの期間から逆算して、申請の時期を決めてください。
資金要件の金額の目安やNLVがサッカー移住に向くかどうかは「ビザ・滞在資格」カテゴリの「非営利ビザ(NLV)」で、発給後の期限は、このページの「ビザが出てから到着後まで、期限が決まっている手続きは何ですか?」で解説しています。
住居や学校は渡航前に決められますか?
学校は、インター校なら渡航前に出願・確保が可能です。公立校は住民登録が前提のため、渡航後の手続きになります(エリア選定は事前にできます)。住居は、内見なしの長期契約はリスクが高いため、「渡航前に一時滞在先を確保→現地で長期物件を契約」が標準です。
夏の下見滞在で候補エリアと学校を絞り込んでおくと、本番の移住後に生活をずっと早く立ち上げられます。
移住前の下見はどれくらいやるべきですか?
最低1回、できれば季節を変えて2回が理想です。1回目(夏の親子留学など)で都市・エリア・学校・クラブの土地勘を作り、2回目(渡航半年前ごろ)で住居と学校を具体的に詰める、という二段構えで進めます。
一度も住む街を見ずに移住するのは、家族にとってあまりに大きな賭けです。下見にかかる費用は、失敗したときの損失を減らすための投資と考えてください。
着地後の立ち上げ
到着後の最初の1ヶ月ですべきことは?
週1-2: 住居確定とempadronamiento(住民登録)。週2-4: TIE申請(入国から1ヶ月以内)、就学申請、銀行口座、通信契約。週4以降: 医療の登録(保健カードまたは民間保険の運用開始)、車の確保、生活動線の確立、です。
この時期は、手続きの予約取りや書類のやり直しで疲れ切ってしまいがちです。現地サポートが最も役立つのもこの立ち上げ期なので、私たちの移住プログラムでは最も力を入れて伴走します。
家族で住民登録をするとき、子どもの分は何が必要ですか?
住民登録(empadronamiento)は、住む市町村の市役所で家族全員の分を申請します。スペインに住む人は、普段住んでいる市町村の住民名簿に登録する義務があります(法律7/1985の第15条)。
| 書類 | 求められる内容 |
|---|---|
| 親の本人確認 | EU外の外国人は、スペイン当局が発行した有効な身分証(TIEなど)の外国人番号。まだ持っていなければ、有効なパスポートの番号 |
| 住所の証明 | 賃貸の場合は、居住用の有効な賃貸契約書と最新の家賃の領収書 |
| 子どもの身元(14歳まで) | Libro de Familia(スペインの家族手帳)または出生証明書 |
| 親の署名 | 子どもの登録には両親の署名が必要。片方の親が窓口に行けない場合は、書面の同意書で代えられる |
国立統計局などが市町村に出した住民名簿の技術指示(2020年、官報BOE-A-2020-4784)に基づく。書類がそろわないときは、市役所が警察の報告や職員の確認で居住を確かめることもあります。実際の書類と様式は市町村ごとに違うので、住む市の市役所で確認してください。
日本の家族はLibro de Familiaを持っていないので、出生を証明する日本の公文書を用意します。日本の公文書には、アポスティーユとスペイン語の宣誓翻訳を付けるのが原則です。現地で取り直すと時間がかかるため、渡航前に取得してください。
住民登録は一度で終わりではありません。長期居住の許可を持たない外国人は、2年ごとに登録を更新する必要があります(同法第16条)。非営利居住ビザなどの最初の居住許可はこれに当たるので、渡航から2年後の予定に更新を入れておいてください。
住民登録がほかの手続きの前提になる理由は、滞在手続き(NIE・TIE・住民登録)で解説しています。
スペインで車を運転するとき、日本の運転免許はいつまで使えますか?
子どもの送迎に車を使うなら、免許の扱いを渡航前に確かめておきます。スペインの一般運転者規則では、外国の免許について次のように決めています。
| 時期・手続き | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 渡航前の準備 | 規則が運転を認める外国の免許は、スペイン語の免許、公的な翻訳を付けた免許、ジュネーブ条約の様式の国際運転免許証などです。日本の国外運転免許証はこの様式で、住所地の公安委員会で申請します。有効期間は発行日から1年です | 一般運転者規則 第21条1項、警視庁の案内 |
| 居住を始めてから6ヶ月まで | 上の条件を満たす日本の免許で運転できます。6ヶ月は、スペインで正規に居住を始めた日から数えます | 同 第21条2項c |
| 6ヶ月を過ぎたあと | 日本の免許はスペインで使えなくなります。運転を続けるには、スペインの免許が必要です | 同 第21条3項 |
| スペインの免許への切り替え | 日本とスペインは、運転免許の相互承認と切り替えの協定を2000年に結んでいます。日本の免許は、同じ区分のスペインの免許に切り替えられます。試験は協定に沿って全部または一部が免除されます。居住を始めた時点から、6ヶ月を待たずに申請できます | 同 第22条1項a・2項、日本・スペインの協定 |
| 申請先 | 希望する県の交通局(Jefatura Provincial de Tráfico)に、公式の申請書と必要書類を出します。切り替えた日本の免許証の原本は、日本へ返されます | 同 第23条1項・3項 |
スペインの一般運転者規則(勅令818/2009、官報BOE-A-2009-9481)と、日本とスペインの協定(官報BOE-A-2000-3840)に基づく。必要書類・手数料・予約の方法は、スペイン交通総局(DGT)の案内で確認してください。
6ヶ月の期限は、到着後の手続きに追われているうちに過ぎてしまいがちです。切り替えの予約は、居住の手続きが済んだら早めに入れてください。切り替えると、日本の免許証の原本は手元からなくなります。一時帰国中の運転や日本の免許の更新の扱いは、渡航前に住所地の運転免許センターで確かめておきます。
居住の手続き(TIEの申請など)の流れは、滞在手続き(NIE・TIE・住民登録)にまとめました。
子どものクラブ探しはいつから始めますか?
生活基盤(住居・住民登録・就学)が固まってから、つまり到着後1〜2ヶ月目からが適切です。まず複数の地域クラブの練習に参加させてもらい、レベル・雰囲気・送迎動線を見て決めます。登録前の練習参加は柔軟に受け入れられています。
焦る気持ちは無理もありません。ただ、「クラブが先、生活が後」の順序だと、審査で問題視されるおそれがあります。先に生活を固めることが、結局は子どものためになります。
移住がうまくいかなかったら、撤退はできますか?
できます。賃貸は解約予告(通常30日)で退去でき、就学・保険・口座も清算可能です。日本の学校には年齢相当の学年に戻れます。移住は「片道切符」ではありません。
私たちは、挑戦の計画と同じくらい真剣に「撤退条件」も最初に決めておくことをおすすめしています。『◯年やって△△なら帰る』が決まっている家族ほど、現地で思い切った挑戦ができるからです。
参考にした一次情報
- スペイン包摂・社会保障・移民省 Hoja 6 非営利居住の初回許可 (ビザ受け取りは通知から1ヶ月以内、入国はビザ有効期間内(最長3ヶ月)、許可は入国日から1年、TIEは入国から1ヶ月以内に本人が申請。申請書類(EX-01・残存1年以上の旅券・無犯罪証明・資金・医療保険・診断書)、資金は月額IPREM400%+家族1人ごと100%、未成年は法定代理人が提出可、提出先は居住地管轄の在外公館、審査は在外公館からの送付後最長1ヶ月(回答なしは不許可)、手数料はモデロ790コード052)
- 外務省 オンライン在留届(ORRネット) (海外に3か月以上滞在する日本人は在留届の提出が義務)
- e-Gov法令検索 旅券法 (第16条(在留の届出))
- スペイン官報 法律7/1985(地方自治の基本法) (第15条(スペインに住む人は普段住む市町村の住民名簿に登録する義務)、第16条1項(長期居住の許可を持たない外国人の登録は2年ごとに更新))
- スペイン官報 BOE-A-2020-4784 住民名簿の管理に関する市町村向け技術指示 (2.1 身分証明(EU外の外国人は外国人番号、なければパスポート番号。14歳までの子どもはLibro de Familiaまたは出生証明書)、2.2.1.2 子どもの登録は両親の署名(他方は書面の同意で可)、2.3 住所の証明(賃貸契約書と最新の家賃領収書。市町村は警察の報告などで確認できる))
- スペイン官報 勅令818/2009 一般運転者規則(Reglamento General de Conductores) (第21条(外国の免許で運転できる条件。スペイン語・公的翻訳・国際運転免許証、正規の居住開始から最長6ヶ月、期限後は無効)、第22条(協定のある国の免許の切り替え、居住開始時点から申請可)、第23条(県の交通局へ申請、原本は発行国へ返却))
- スペイン官報 BOE-A-2000-3840 日本とスペインの運転免許の相互承認と切り替えに関する協定(交換公文) (スペインは日本の免許を同等区分のスペインの免許に切り替え、試験を全部または一部免除する。2000年1月21日から暫定適用)
- 警視庁 国外運転免許証取得手続 (ジュネーブ条約締約国で使える。有効期間は発行日から1年で更新制度なし。住所地で申請)
ご注意
移住・登録の成否はご家族の状況と各機関の審査によります。当方は選手登録・入団を保証せず、職業紹介・雇用の斡旋は行いません。